J1昇格へ「決定的に足りなかった」勝者のメンタリティは、どこにあったか。
岩政大樹が振り返るファジアーノでの2年間と昇格プレーオフ
■加入半年で起きた「熱」のぶつかり合い
変化は少しずつ起こっていきました。
夏頃のある試合で、ある若手選手が僕の指示に言い返してきました。多分、今でもその時は僕が正論を言っていたと思いますが(笑)、大事なことはそういうことではありませんでした。初めて「熱」がぶつかり合いました。
僕はそれが嬉しくて、「これでチームは変わる」と思いました。
その頃から、練習中に選手たちが意見を言い合う場面が増えました。苦しいチーム状態に「自分に何ができるか」と相談に来るものもいました。いろいろな選手と語り合いました。
僕たちは徐々に新しいチームの形を見つけていきました。そして、それぞれが自分の立ち位置を見つけていき、試合においても自分の「色」をよく見せるようになりました。
苦しいチーム状態において、僕たちはしっかりと団結と結束を示したと思います。徐々にまとまりを見せていった僕たちは、2年目に勝負をかける準備を整えました。
2年目は確実に勝ち点を稼いでいきました。プレーオフにも進出したことのないチームが、現実的にJ1を見据えてシーズンを過ごすことができました。
しかし、確実な戦いを見せる一方で僕たちにはもう1つの顔がありました。波に乗り切れないのです。連敗がない代わりに連勝は3連勝が最高でした。チームの状態が良くなってくるとどこか自分たちでブレーキをかけてしまうようなシーズン。
それが完全に表面化したのがシーズン終盤の8試合連続勝利なしでした。
この頃、プレーオフ進出をほぼ手中に収めた僕たちはあわよくば自動昇格を、と躍起になっていました。しかし、その流れに逆らうように、チームはどこか歯車が噛み合わない状況に陥っていきました。
誰が悪いとか、何かがあったとか、そういうことではありません。ただ日常の中で、僕は少しだけ何かが違ってきたことを感じていました。
キャプテンとして、どのタイミングで何をしようか、色々と考える時間も増えていきました。実際、色々な手を使いました。しかし、僕は少し優しすぎたかもしれません。「熱」や「厳しさ」をもう一度注入しようとしても、1年目のようにはいきませんでした。
結局、プレーオフに進出することはできましたが、僕たちは最後に、一番大事な日常を少しだけどこかに置き忘れてしまっていました。